青根の大杉

先日、林業を営むS氏が、アトリエを訪ねて来てくれた。以前お寺の裏山を整備することがきっかけで知り合った。「この辺りでも彫刻に使えそうな立派なヒノキが取れるといいのだけど、、」と言うので、ヒノキの良材はもちろん素晴らしいけど、人が見向きもしなくなって放置されているものの方が作品になる事が多いと伝えると、「それなら、、」と案内してくれたのは青根の諏訪大社であった。そこには樹齢700年の大杉が立っている。青根の大杉と呼ばれ近隣では誰もが知る木だ。

一歩境内に踏み込むと杉の存在感に圧倒され言葉を失う。この木の枝が昨年の台風で折れて落ちた。社殿などに被害はなかったが、それを機に樹木医の診断により本体の幹の内部も腐っている箇所が多く空洞化している事が分かったそうだ。倒木の恐れもある為、今後どの様に対応していくべきか議論されていて、伐採した方がいいのではないかという意見もあると聞き驚いた。

枝は社殿の脇に何等分かに切って積んであった。枝といっても周囲の木の幹よりもずっと太い。チェーンソーの切り口からはコーヒーゼリーのような樹液の塊があふれ出ていてた。もし使えるようであれば神社の方には確認しておくからという事で譲り受ける事になった。

数日後連絡を受けて、S氏と小学生の息子さんと3人で、お供えをしてから作業に取り掛かった。Ⅰ,5メートル程の長さにしてから半分に引く。それを2体切り出した。息子さんと年輪を数え始めるが100を超えたあたりで飽きてやめた。三人で汗だくになりながら声を張り上げて、ゴロン、ゴロンと転がしてどうにか車の荷台に積み込み、無事に運び出した。

青根諏訪神社の大杉
樹高45m、胸高周囲9.5m、根周り12.5m、樹齢700年(推定)

*県の文化財保存の担当に電話で現状を確認すると、今年度は保存の方向(ワイヤーを張るなど)で対応が決まったとの事であった。